私の祖母
八十八歳の祖母は一人暮らし。最近少し物忘れが出てきたようにも思えますが、博識で料理や手芸が得意なスーパーおばあちゃんです。携帯電話はもたず、スマホに興味はあるものの、「年寄りにはカタカナがよく分からない」と何年も前から言っていました。60代の母はスマホもパソコンも使いこなしています。旦那の77歳のおじいちゃんもスマホです。個人差もあるでしょうが、ネット社会との距離感は80前後で大きく異なるのではないかと思います。これがいわゆるデジタルディバイドなのでしょうか。
『らくらくパソコン』は本当に楽か
もともと祖母は、8年ほど前にプレゼントした高齢者向けの『らくらくパソコン』を持っていました。見た目は普通のパソコンですが、スクリーンがタッチパネルになるのでマウスに不慣れも操作でき、キーボードも日本語表記で母音に色がついているなど分かりやすいです。以前は一緒にネットで調べものをしたり、Skypeでテレビ電話をしたりしていましたが、誰かが来たときしか開かないため、次第に部屋の隅で埃をかぶった状態になってしまいました。祖母一人ではほぼ使わないため操作も覚えられませんでした。『らくらくパソコン』は私の祖母にはらくらくではなかったのです。もう少し若い世代のパソコン初心者向けだったのはと思います。
高齢者向けのパソコンとは
タブレットに買い替え
一番大きな変化をもたらしたのは、タブレットPCに買い替えたことです。11インチの中古、カバー付きを購入。常にスタンバイの状態にし、再起動やアップデートは祖母の家を訪れる人にお願いしました。すると、ワンタッチで開けるようになり、パソコンを開くこと自体が簡単になりました。キーボードがなくなりスクリーンが近くなったことで、「キーボード=難しい」という概念も消えました。何より、祖母の家に出入りする子ども達が祖母と一緒にタブレットを操作し、使い方を教えてくれるようになりました。
高齢者のためのパソコン設定
文字表示はできるだけ大きく、それでもページを読むときに画面からはみ出すぎない程度に調整しました。デスクトップアイコンは必要最低限の「インターネット」「Skype」「LINE」だけに。祖母の現状から文字を入力することは諦めましたが、一応一番大きい「平仮名キーボード」をダウンロードしておきました。
使い方は紙媒体でメモ
紙媒体に馴染みのある祖母のために、使い方の手順をメモ書きにしました。例えば「テレビ電話をかける」と見出しを付け、
- パソコンを開く
- 画面を上にシュ!
- 「ログイン」を押す
- 左上の水色の「スカイプ」を押す
- 名前を押す
- ビデオのマークを押す
と簡潔に書きました。実際にはアイコンのイラスト入りで、大きくはっきり書いています。これも効果があり、祖母は毎回お守りのように握りしめてパソコンを操作しています。本当はほとんど頭に入っているのですが、説明書きをたどることで安心するみたいです。
「Skype」と「LINE」、高齢者には?
Skypeはもともと以前のパソコンでアカウントを作っていました。LINEも固定電話でアカウントを取得。残念ながらID検索ができないですが、私たち家族から手軽にメッセージや写真を送れるようになりました。祖母はスタンプで反応します。どちらも一番大きい表示設定をしましが、LINEのパソコン版は一部拡大表示ができないところもあり、思ったより操作が難しかったです。祖母にとってはLINEよりSkypeの方が使いやすいようです。
音声検索と高齢者
ネット検索もやってみました。Googleの音声検索が大活躍。「マイクのボタンを押して、キーワードを大きな声で言うだけ」と説明しました。パソコンに入っていたCortanaは祖母の発音をうまく聞き取れませんでした。Googleの方は上手く反応。祖母が最初に検索して熟読したのは「親族の墓」でした(笑)
繰り返し練習
アメリカに出発するまでの間、何かと固定電話ではなくタブレットPCを使って連絡をとりました。「いま何してたの?」「昼ごはん何食べた?」などたわいもない話です。「朝起きたらパソコンを開く」習慣をつけてもらい、「テレビ電話ができた」という成功体験を積んでもらいました。
現在の祖母
最初はテレビ電話がつながると若干興奮状態で、「ここを開いて、ここを押した」と、どうやって接続したかをしきりに説明していた祖母でしたが、回を重ねるごとに「昨日は〇〇が遊びに来たよ」「それは何を料理してるの?」とお互いの話ができるようになりました。着信があったとき応答するのには時間がかかりますが、何度か繰り返せば必ず出ます。今では祖母の方からかけ直してくるまでになりました。
おばあちゃんが操作を忘れてしまわないよう、オンラインになっているかこまめにチェックし、こちらから電話するようにしています。こちらでの生活の様子もテレビ電話でたくさん見せられます。